競歩並みに歩いて思ひ川前に到着。
本宮には沢山の参拝客が居たけれども、こちらに到着した際には私の前に女子2人が歩いている程度だった。
そして奥宮に到着した。
手水で清めて奥宮へ、と思ったら、私の先を歩いていた女子はそのまま引き返して行ってしまった。
あら、せっかくここまで来たのにお参りしていかないんだ、と思いつつ神門を潜ると誰も居なかった。
貴船大神様がご用意して下さったこの空間は、辺り一面の銀世界と相まってそれは清らかに感じられてしまった。
狛犬さん達にも一年ぶりにお会い出来たことに感謝してご挨拶させていただき
そして奥宮に御鎮座されているそれぞれのお社にもお参りさせていただいた。
いよいよ本殿前へ。
そしてこちらに再びお招きいただいたことに感謝してお参りさせていただく。
奥宮にお参りさせていただくと、やはり聖地という名に相応しい厳しさを感じる面もある。
今、貴船神社の奥ノ宮の床下には霊泉が秘められているという。決して見てはならない竜穴である。幕末の遷宮の際に大工があやまって泉の中にノミを落としたら、黒雲とともに竜が立ちのぼり、その大工はほどなく絶命した。
この口碑は奥ノ宮こそが水神の坐ます聖地であり、雨乞い、雨止めの神として、平安遷宮以前から地元の人々に敬われていたことを示唆する。
社伝でも貴船社の起源は平安遷都よりずっと古く、神武天皇の母の玉依姫が黄舟に乗って淀川から賀茂川を経て、貴船川をさかのぼってそこに一字の祠を営んだのがその始まりという。奥ノ宮の船形石はその玉依姫が乗ってきた船を石で囲んで隠したもので、この石に祈ったりあるいはここの小石を三つ持っていると航海安全のご利益があるといわれ、船員や漁師の信仰を集めている。
~『京都のお寺神社謎とき散歩―歩いて訪ねる古都のご利益さん』より引用
こうやって一人、こちらの地に佇んでいると何かひれ伏したくなるような圧倒的な存在を感じてしまった。
それは貴船大神様がくれた、とっておきの時間だった。
後ろ髪を引かれるような思いで、奥宮を後にする。
そしてやはり結社にもお伺いしなくてはならないような気になったので、
時間に追われるような格好となってしまったけれども、お参りさせていただいた。
これまた誰も居ない境内。
この静寂の中、再びお招きいただいたことに感謝してお参りさせていただく。
貴船大神様の御神徳というのは、計り知れないものがある。
例えばこの歌碑に書かれている和泉式部の歌
ものおもへば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞみる
夫にうとんじられた和泉式部が貴船に詣でて、上記の歌を詠むと貴船大神様から
奥山にたぎりて落つる滝つ瀬の玉散るばかりものな思いそ
という返歌があり、まもなく夫の愛を取り戻すことが出来たというエピソードが一番有名なのだろう。
そして結社を後にして、最後の最後に本宮に再びお参りさせていただき
無事最終バスに乗車することが出来、京都駅まで戻った。
そして夜、ホテルで一息ついていたら、電話が鳴っていることに気付き対応すると、ここ最近ずっと心配していた仕事上の出来事に進展があったという報告を受けた。
旅行中、気が気でなかった部分もあったので、その報告を受けたと同時に安堵の気持ちが押し寄せてきた。
貴船大神様に御祈願させていただいたその日に、その報告を受けたということ。
それは、偶然のようでもあり、偶然ではないと思わざるを得なかった。
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