梅雨明けの暑い日に、武蔵御嶽神社の参拝を終えて、そのまま帰ろうかと思っていたけれども、何故か足は奥宮へと向かっていた。
石碑を見つける。
アルピニスト 長谷川恒夫さんの没後20年記念石碑だった。
登攀の前には、心の葛藤がある。なぜ悩むのか。
それは行動を起こすことによって『肉体』が滅びることを『精神』が恐れるからだ。
『精神』とはヒトが人間であることを示す最後の砦なのだ。
長谷川恒夫
と書かれていた。
肉体が滅びることを精神が恐れるが故に、行動を起こすことを躊躇してしまう。
それは、登山だけではなくて、全てに於いて言えること。
ただ、行動を起こす事を躊躇していては、何も生まれない、そんなことを何となく思いながら、歩みを進めた。
そしてしばらく歩くと、有名な天狗の腰かけ杉に差し掛かる。
天狗の腰かけ杉
多くの人はここから、ロックガーデン方面へと向かう。
私は、多くの人々から離れて、武蔵御嶽神社の奥宮へと向かう。
奥宮への鳥居。
結界、という言葉がぴったりの空気感を感じながら鳥居を潜る。
するとツキノワグマ目撃情報なる案内を見つけた。
入山の際には音(クマ鈴、話し声など)を出してくださいと書かれていた。
はっきり言って、ここから一人で入山するのは、躊躇したけれども、幸い鈴を持っていたので、それを手に持ちながら、歩いて行く事にした。
鈴を思いっ切り振りながら歩いていると、浄化しながら歩いているような気分になりつつ。。
ロックガーデンに行く道とは違って、全然整備されていないところなので、歩くにも一苦労だったけれども、奥宮へと向かう道は、整備されていない方が良いのだろう。
誰でも気軽に行けるような場所ではあってはならないから。
えっちらおっちら、正直よじ登るような格好になる場面も多い。
けれども鈴を降り続け、どうか熊さんに会わないように、と願いながら歩く。
そして目にしたのは、小さな石碑だった。
日本武尊の后 弟橘媛の碑
お日様の光を浴びて、とても輝いていた。
神々しいものを感じながら、お参りさせていただいた。
そして、歩く。
歩く。
歩く。
正直なんでこんな怖い思いをしながら歩いているのかは、良く分からなかった。
けれども、行かなければならないと。
鎖場も渡り
とにかく、歩いた。
そして、男具那社へたどり着く。
男具那社
こちらまで無事にお招きいただいたことに感謝してお参りさせていただいた。
最初、こちらが奥宮だと思ったけれども、丁度こちらにお伺いした時に、このお社のそばで休憩していたおじいさんに、もうちょっと歩くと奥宮だと教えてもらったので、再び歩いてみた。
しばらく歩くと奥ノ院山頂の案内が(90分って書いたの誰よ~!!!)
しかし、この山頂までが山登りならぬ岩登りというカンジだった。
私は何をしているのだろう、と思いつつ、とにかく足を前に出すしかなかった。
そして到着したのが、武蔵御嶽神社 奥宮。
武蔵御嶽神社 奥宮
何も、言わなくても、分かりますよね。
すごいところです。
誰も居なかったので、しばらくこちらに居させていただいた。
そして、下山。
人の多いところまで戻ってきて、休憩。
都内有名ホテルに長年勤務経験のあるマスターソムリエの方が休日だけ開く山頂近くの小さな茶屋として有名な、長尾茶屋さん。
長尾茶屋
こちらでビールをいただく。
もっと涼しい季節ならば、優雅にワインでもいただきたいところだったけれども、取り急ぎ喉を潤したかったのです(笑)
ビールを飲んで、ケーブルカーの駅まで戻る道すがら、ふと目にした百合の花の美しさに触れたり、そして、山を登るということで、自然の偉大さに、改めて気づかされたりした。
己がどれだけちっぽけな存在であるかということ。
そして、そのちっぽけな存在でも、生かされているという、神様のお心を。