比叡山は春色に包まれていた。
根本中堂の近くには宮沢賢治の歌碑があった。
宮沢賢治は法華経の熱心な信者であったということで、身延山でも宮沢賢治の石碑を見たけれども、延暦寺もたくさんのお経の中で「法華経」を大切にしているところだと知る。
宮沢賢治の歌碑
ねがはくは
妙法如來
正遍知
大師のみ旨
成らしめたまへ
宮沢賢治と言えば、幼い頃に読んだ『注文の多い料理店』がすごく印象に残っている。
欲深い人が美味しいものを食べられると準備をしていると、その準備は実は魔に食べられるための準備だった、という、一見ファンタジーのような世界を描いているように思えて、実は人間社会を厳しく風刺していると、小さいながらも思っていた記憶がある。
自分の利益だけを考えている人間は、実は誰かの餌食にされることも知らずに生きているということを風刺しているのかと思った。そして、その状況から救ってくれたのは死んだはずの犬だということが、とても印象に残っていた。
こんな風にひねくれた考えを持っていた子供だったから、今現在こんな風になっちゃったのかもね、ワタクシ、なんて思いつつ、境内を再び歩く。
そして文殊楼に向かう石段を登る。
久遠寺の石段を登り切った経験があるので、この位の石段では驚かなくなっている自分(笑)
文殊楼
三間二間のこの重層門は、円仁の創建で、中国五台山の霊石が五方に埋められ、楼上に文殊菩薩が祀られている。
比叡山の総門としての役割を持ち、まずこの門を潜り階段を降って根本中堂にお参りするのが正式な参拝の形なのだ。確かに本坂を登ってきた場合は、一番最初に出会う堂塔伽藍が、この文殊楼である。
~伝教大師最澄の寺を歩く―比叡山延暦寺を中心に、最澄ゆかりの地へ (楽学ブックス―古寺巡礼―古寺巡礼)より引用
ということで、私は正式な参拝の形とは逆行する形となってしまったけれども、文殊楼の中に入り、文殊菩薩様にこちらにお招きいただいたことに感謝してお参りさせていただいた。
ちなみに文殊菩薩様は階段を上った2階部分にいらっしゃるので、文殊楼の中の階段を登って行かなければならないのだけれども、この階段がとても急なので注意が必要デス。
お参りさせて頂いた後に、御朱印を頂戴する。
対応された方の態度がちょっと、と思ったけれども、人の対応で自分の機嫌が左右されるというのも情けない話だよな、と思い、御朱印を頂戴した後に笑顔でありがとうございました、と伝えたら、その対応された方の対応にちょっとした変化があったことが、ここでの学びだった。
周りの状況に左右されることなく、いつも機嫌良く居ることも大切なんだと。
その後文殊楼周辺を散策。
そして「星峰稲荷社」という案内を見かけたので、そちらの方に向かって歩いて行った。
星峰稲荷社
こちらは荼枳尼天様がお祀りされているお社だった。
こちらで荼枳尼天様にお会いするとは思っていなかったので、これまた不思議な感覚に包まれながら、文殊楼方面に戻りながら写真を撮ると、綺麗な写真が撮れた。
そして根本中堂に向かうのとは反対側の石段を降るとそこには大書院があった。
大書院
この先には延暦寺会館があって、この地に今度比叡山にお伺いする機会があれば、是非とも宿泊してみたいなぁと思ったりした。