『阿・吽』と『大愚のすすめ』

神社仏閣の旅には出ているものの、ブログを書く時間が捻出出来ないという状況に陥ってまして、久方ぶりの更新です。

先日も比叡山方面にお邪魔したのですが、時間が限られていたので根本中堂などは拝観出来ず、とりあえずお参りしたかったところを駆け巡るような格好となってしまったのでした。

けれどもやはり旅に出るといろいろな気付きがいただける訳でありまして、今回も、とあるきっかけで伝教大師最澄様のお言葉に触れられた事が一番の収穫なのでした。

それ以来、ずっと最澄様のお言葉の重さを噛みしめる日々が続いている。

そのお言葉の重さもさることながら、痛々しい程までに清らかなその御心。

そんな御心に触れられるのが、最澄様が比叡山に入山してまもなく書かれたという『発願文』。

その中で最澄様がご自身について書かれた文章が

是に於て、愚が中の極愚、狂が中の極狂、塵禿の有情、底下の最澄、上は諸仏に違し、中は皇法に背き、下は孝禮を闕く。

というものなのだけれども、

おかざき真理さんの『阿・吽 2 (2) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)』では、こういった表現をされている。

このお言葉の意味を知りたくて、いろいろなものを読んだのだけれども、その中で第253世天台座主山田 恵諦大僧正猊下の書かれた『大愚のすすめ―生きる心得・十一説法』という本に書かれていたものが、一番腑に落ちた。

伝教大師最澄の言葉に「愚の中の極愚」というのがあります。

大師は十九歳で比叡山に入り、二十二歳で中堂をお建てになった。千二百年前のこの時を比叡山開創の起源とするわけですが、その際に大師の書かれた願文、つまり宣願文の中にこの言葉があります。

色々と学び、励んではみたけれど、自分は知恵も才能もない最低の人間であると。ならばこれまでしてきたことはすべて流し去って、生まれたままの自分になってみよう。愚の中の極愚に徹してみよう。そして、自己を完成するまでは、修行以外のことには一切心を向けず、他人に説教などすまいといった内容の五つの誓願をお立てになる。一から出直す決意です。

自分が愚の中の極愚であると本当に気づき、またそこまで自分が落ちてみるちゅうことはなかなかできることではありません。しかしその気持ちになった時、目の前が開け、ものごとがよく見えてくる。自分をまず最低の位置に置いて、そこから眺める世界というものは、上から見るのとはえらい違いがある。山川草木のすべてが先生になり、真実というものを教えてくれるのです。

愚の中の極愚というのは、言い換えれば無に帰すということであるわけです。

無にするというのは、何もないということではなく、純粋であるということです。「無」というのは、非常に強い言葉です。色や味があってはいけない。少しでもあやがついたら、もうそれで無ではないことになってくる。無がなるが故に、無尽蔵になる。あらゆる可能性が開けてくる、それをどう生かしていくかが最も大切なことになっていくのです。

自分をなくせずして、「人さまのいいところを全部いただこう」なんて考え方、そんな利己的な色のついたものは無でもなんでもない。そんなことでは結局のところ、人さまのいいところは見えてこないし、いただけるわけもない。

自己というものをなくし、第三者の立場に立って自己を眺め、相手を眺めるのです。そうすることで真実が見えてくるし、ことの善し悪しがわかってくるのです。自分の立場から、他を批判するのではないのです。相手との摩擦によって人間というものは磨かれ、光るということはありません。向こうを磨こうとするんではなくて、ただひとりこちらを磨く。そこに生きていく道が開ける。人生が光ってくる。

~『大愚のすすめ―生きる心得・十一説法』より引用

比叡山には何度かお伺いしていたのにも関わらず、今回初めてこのお言葉に触れられたことが出来たというのも、タイミングと言うべきが、ご縁と言うべきか。

ついでに言えば、知ってる人にとっては「何を今更」というカンジなのでしょうが、この旅に出た後に、おかざき真理さんの『阿・吽』という漫画の存在を知り、webで試し読みをしてみて、その世界観に引き摺られるように思わず全巻大人買いをしてしまった。

近所の本屋さんで全巻揃わなかったので、3件はしごしてようやく全てゲットした代物だったりする。

この漫画の中で描かれている最澄様の、その御心の清らかさに、読む度に涙してしまい、今年1月にお伺いした浄土院の清らかさを思い出さずにはいられなかったりする。

私は何故これほどまでに比叡山に惹きつけられるのだろうと、比叡山にお伺いする度に思っている訳だけれども、これで一つ、謎が解けたような気分になった。


スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.