自分を見つめなおす旅~永平寺に行ってきた‐その④一泊二日の参籠#1

永平寺寂光苑27

14:00も過ぎたので、いよいよ永平寺に上山。

永平寺参籠1

永平寺参籠

永平寺の正門の門柱には次のような文字が綴られている。

杓底一残水

汲流千憶人

これは永平寺第73世貫主熊澤泰禅禅師様が作られた四句からなる五言詩の後ろ二句を刻んだものとのこと。この漢詩の前二句は

正門当宇宙

古道絶紅塵

と詠まれていて、最初から順に読むと

正門は宇宙にあたる

古道は紅塵を絶す

杓底の一残水

流れを汲む千億の人

ということ。

この意味を簡単に取ると下記のようになると『道元禅師の寺を歩く―永平寺を中心に、只管打坐の精神が息づく地へ (楽学ブックス―古寺巡礼)』に書かれていた。

正門は人知をこえた真理の世界、すなわち仏の教えの入り口であり。道元禅師が教えられた、そして古人が歩んでこられた道(教え)は人間の様々な心の垢を除き去ってくれる。

柄杓で汲んだ水で手を洗い、そして柄杓の底に残った水を川へ還されたという道元禅師。その風を慕い、多くの人がまた永平寺の門をくぐってその教えを汲む。

永平寺境内には川が豊富に流れていて、年中絶えることがない。かつて食べ物やその他のものが十分になかった頃でも、水が不足することは決してなかったであろう。そのいくらでもある水さえ粗末にしてはいけない、大切にするようにと、道元禅師は教えられた。

~『道元禅師の寺を歩く―永平寺を中心に、只管打坐の精神が息づく地へ (楽学ブックス―古寺巡礼)』より引用

永平寺参籠2

永平寺参籠3

永平寺参籠4

永平寺参籠5

参道を登ると通用門がある。

永平寺参籠6

ここで一般の参拝客なども入山料を支払い、入山するのだけれども、今回私は参籠するので、受付付近にいらっしゃった方に「参籠に来たのですが」と告げると、こちらへどうぞ、ということで、靴箱のあるところまで案内を受けた。

そして靴箱のところに居た係りの方にバトンタッチする形で、参籠にいらっしゃった方です、と受付の係りの人が靴箱のところの係りの方に言うと、「東京からいらっしゃったキセキレイさんですね」と、私の名前の書かれた靴箱のところに履いていた靴をしまうように案内を受けた。

何故名乗っても居ないのに、私だと分かったのかしらん?と思いつつ、案内通りに靴をしまい、まっすぐ歩いて左手にある総受所で受付をするようにとの指示を受けた。

そして総受所で一泊二日の参籠に申し込んだ者だと告げて、申込用紙に住所氏名等を記入し参籠恩金の八千円を支払い受付をしてもらった。

その後、吉祥閣の三階にある部屋へと雲水さんに案内される。

部屋に行く前に東司(御手洗い)についての説明があった。鳥蒭沙摩明王様が祀られているので、東司に行く前、そして行った後にはお参りするようにとのことだった。

永平寺参籠16

*この写真は後で撮らさせていただきました。

部屋につくと、参籠についての案内がある。

合掌・叉手・法界定印という手の形の説明、そして三黙道場の説明。禅堂・浴室・東司(御手洗)では話してはならないということだったけれども、参籠の参加者の禅堂というものは、今いるこの部屋なので、私語は慎むようにとの案内を受ける。

一人で宿泊しているので私語を慎むようにとの案内はちょっと「?」かなぁとは思ったけれども、まぁ五月蠅くするな、ということなんでしょうと勝手に解釈。

そしてお布団の畳み方やシーツや浴衣の出し方、部屋に置かれた湯のみは使用したら洗って元に戻すように等々細かな説明を受ける。

けれども、これらのことを一度にバーッと説明を受けると、ちゃんと覚えられるかどうか不安になった(特に私のような一人で宿泊している人間だと、後で同泊の人に確認するということが出来なかったので)そして、普段いかに集中して物事を聞いていないのかと言う事を再認識できた。

後で聞けばいいや、というのは、ここでは通用しないような気がしたので。。。

そして、この後お風呂に入ってもらいますという説明を受けたので、しばらくしたら勝手にお風呂に行けばいいのかしらん?なんて考えていたら、準備が出来たら部屋から出て来て下さいと言われたので、思わず雲水さんに「この後すぐですか?」と確認したら、「はい。準備が出来次第お願いいたします」と言われてしまった(爆)

慌てて持って来た荷物からタオルとシャンプー、着替えなどを取り出して、エコバックに詰めて部屋を出ると雲水さんが待っていた。

地下1階にある浴室に案内される。浴室に行く前に浴室近くにいらっしゃる「跋陀婆羅菩薩」様にお参りする。そして入浴後にも、再びお参りしてからお部屋に戻られてください、浴室で使用した洗面器と椅子は元の場所に戻すようにと案内を受けて、雲水さんと別れて、一人浴室に入る。

事前にネットなどで永平寺の参籠について調べたら、浴室には石鹸しか置かれていないということだったので、念の為シャンプー持参で行った訳だけれども、女子用の浴室にも勿論石鹸しか置かれていなかった。

ただ、なんとなく香りの漂うシャンプーリンスを持って行くのは良くないような気がしたので、カウブランド 無添加シャンプーを詰め替え容器に入れて持っていった。これならリンスなど要らないし、変な人工的な香りも漂わないので。

一人、お風呂に入る。

私は一人旅が好きなので、旅先の旅館などでは大きなお風呂で他のお客さんが居ない時間を見計らって、一人で入ることも多い。

ただ、永平寺の浴室での一人入浴と、その他の旅館などでの一人入浴とは全く違った印象を受けた。

永平寺の浴室は、本当に静寂そのもので、自分が自分を洗っている音というものがはっきりと聞こえてきた。

余計な音というものが一切しない。

普段旅先でお湯に浸かると、うーん気持ちいいー!なんて気分になるのだけれども、こちらでの入浴は気持ちいいー!とかそういうものではなくて、お湯に身を沈めさせていただいている、というような気分になってしまった。

入浴一つでも、これだけ自分を見つめることが出来るのかと思ってしまった経験だった。

そして入浴後に再び跋陀婆羅菩薩様にお参りして、部屋に戻った。

永平寺参籠8

お部屋は一人でも18帖という広いお部屋だった。

ただ、テレビや本など余計なものは一切無い。

永平寺参籠10

永平寺参籠9

あるとすれば、参籠について書かれた説明文や

永平寺参籠12

参籠者用の感想ノートだったりする。

永平寺参籠11

永平寺参籠7

持って来たドライヤーで髪の毛を乾かして、机の上にあったお茶受けのお菓子と共にお茶をいただいた。

永平寺参籠13

一泊二日の参籠というのはお客様扱いなので、スマートフォンなど取り上げられることもないのだけれども、この静寂の中でスマホを取り出して時間つぶしをするような気分にはなれなかった。音楽も聞こうと思えば聞けたのだろうけれども、その行為が余りにも勿体ないような気がした。

部屋にまで聞こえてくる、降りしきる雨音、そして永平寺川の激しい川の音が、全てを清めてくれるような気分になりながら、ただ、自然の音の身を任せていた。

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