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禅の教えを日常生活に活かすエッセンスが収められているような本なのかしらん?と思って本を手に取ってみた。
しかし、そんな生易しい本ではなかったし、普段使っていない頭をフル回転させながら読んだ(笑)
最近禅に関する本を読みまくっているけれども、沢山の本を読む中で、今までの自分の中にあった「スピリチュアル」的な価値観がガラガラと音を崩れていくのが分かる。
そして、その価値観が変わる度に、とても生きやすくなってきたことを実感できている。
例えば、良く言われる「原因と結果」の法則。
物事は全て原因があって結果があるということ。
けれども、世の中ってそんなに単純じゃないって、ある程度年齢を重ねれば分かることなのに、それにコロっとだまされてしまう人も多い。
昔読んだスピリチュアルさんの本には、つい疲れてソファで寝てしまったが故に、風邪を引いてしまったのは、その人がだらしがないから、というような内容が書かれていた。
なので、自分を律して、ちゃんとキチンとした生活をしましょう、ナンテ事が書かれていた。
でもさ、その人が何故ソファで眠りこんでしまう位にヘトヘトに疲れているのか、という部分には触れていないのが、私にはとても不思議に感じたんだな。。。
やる気が出なくても、やりましょう、とも書かれていたけれども、何故やる気が出ない?という根源の部分には触れていないのも不思議だった。
この本を読んでいたら、よくスピ本で言われている「原因と結果の法則」なるもののカラクリに気が付いた。
「因果」の意味
「誰の責任か」と言うことは、要するに「誰が原因か」と問うことである。また、何事かを意志し、反省し、決断するためには、その前提として、考えや経験を因果関係に整理できなくてはならない。つまり、主体的であるためには、自己の考えや行いを因果関係に整理し、その関係に自覚的でなければならないのだ。古来仏教が「因果の道理」を教えの基本中の基本として強調するのは、その意味においてである。
仏教で「業(ごう)」の考え方が重視されるのも、この局面である。「業」の原意は「行い」であり、ひとつの行いは次の行いに影響を与えるところから、それが因果の思想と組み合わされて一体化した。つまり、さまざまな現象の原因に個人の行いを考える因果思想が、業思想である。
ところが、ここで問題なのは、いわば「仏道をならう」主体を作り出す手段というべき「因果」・「業」の考え方が、往々にして、ある一定の行為が自動的にある一定の結果を引き起こすという、機械的な決定論の原理に誤解されることである。
インドの諸思想や仏教において、存在論的原理として「因果」が強調されるのは、人格神的絶対神を認めないからであろう。
絶対神が存在するというなら、自分の存在を含め、この世のさまざまな現象は最終的に神の意志に帰されて、「神の摂理」として説明される。直接、神が原因とされなくても、第一原因が神である以上、因果の連鎖を作動させる実体的力としての神が常に意識されるから、「因果の道理」それ自体が強調されることもない。
しかし、その種の人格神を設定せず、たとえば「万物の根源」のようなものを考えるなら、それがこの世の全存在の第一原因として実存するとされるだろう。仏教はこういう実体を考えない。が、考えないにしろ、結局、因果の連鎖それ自体の存在を認めるならば原因が結果を引き起こす力は、因果関係に内在していると考える他なく(「因果応報」)、因果そのものが神にかわる形而上学的原理として理解されることになる。「因果の原理」とはそうものとして実体化されるのだ。
するとこれは、単なる宗教的主体性の生成手段であることを超えて、この世のあらゆる存在の関係を規定する存在論的原理と重なる。そうなると、これは単に個人の経験で納得できる範囲(「自業自得」)を超えた、より長い時間幅の現象をも説明する概念になる。つまり、いわゆる論理上の因果律と仏教の「因果の原理」は同じだとされるのである。
とすると、たとえば「善いことを行えば善い果報がある」というような宗教的行為=「業」に関する言説が、種をまけば芽が出るという自然現象や、酸素と水素で水ができるというような化学反応と同じレベルで論じられるようになる。そうした安直な混同において、自らの経験において自らの行為の成り行きあり方を考えるための「善因善果」・「悪因悪果」の考えが「科学的にも正しい」と証明されたりするわけである。
~日常生活のなかの禅 (講談社選書メチエ) より引用
スピ本を読むと、科学でも証明されています!と書かれている本が多いのには、辟易としていたので、この部分を読んで霧が晴れたような気分になれた。
まぁ天使にお任せ!なんていうようなスピ本が好きなような人はこの手の本は読まないと思いますが(爆)
講談社
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