ありのままの幻想

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photo credit: insidethemagic via photopin cc

テレビはほとんど見ないけれど、「5時に夢中」だけは時間が合う限り見ている。下世話な話も多いけれど(笑)一筋縄ではいかない百戦錬磨のコメンテーターの皆さんの意見は、聞いていて為になることも多いのです。

昨日は月曜日だったので、マツコ・デラックスさんと若林史江さんがコメンテーターの日だった。

夕刊ベスト8というコーナーで取り上げられていた記事と、その記事に対するお二人の意見がとても興味深かった。

夢を語る若者たち

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photo credit: h.koppdelaney via photopin cc

この記事の概要としては、最近は夢みる若者を称賛する傾向にあり、ポジティブであることが良いとされるポジティブ教とでも言えるような状況が蔓延しているけれども、夢を追い続けて本分を見失ってしまい、ワーキングプアに陥っている人も居るという現実があるということだった。

この記事に対するマツコさんや若林さんの意見が秀逸だった。

マツコさんは、

  • 昔の人の「夢」というものは、具体的な「目標」に近かったので「夢」を語り合う、ということも出来た。
  • しかし今の人たちの「夢」というものは、漠然としすぎている。「何をやるか?」ではなく「金を儲けたい」といったような、それこそ「夢」が「夢」でしかないことを思っている人が多い
  • 今の人は行動も起こさないのに、夢を語っていることが多い。無茶をしない人が多い印象を受ける。
  • 「夢も希望もない」という印象を今の若い人からは受けるけれども、それでも夢があるというのならば、それこそ漠然としていて、「夢」に向かってがむしゃらに頑張っている姿を見ないから、このような印象を受けるのだと。
  • それこそ「ありのままで~」という歌詞があるけれども、この歌詞について「今のままで良い」=「今のままのあなたで良い」と解釈されていることが多い。しかし、本当は「自分がやりたいことだったりを、ありのままに表現しても良い」のだという意味。それなのに「現状の、ありのままの自分で良い」ととらえる人が多い。

というようなことを語っていた。

若林さんも

  • 記事には「ガタガタ言わずにまず働け」と書かれているけれど、その通りだと思う。
  • 働いて夢の仕事に就けるのは、全体の1%~2%居るか居ないかで、まずは働いてみて、その中で自分の小さな夢だったり、自分の中の壁だったりを乗り越えることが必要だと。
  • 例えば、3年働いて気付く仕事の面白さもあると思うけれど、やりたい事と違うと言って、やりがいも見出せず、すぐに辞めて自分は何をしたいのだろう?と他の仕事に移って行く人が多い。そしてそれが「ありのまま」だと思っている。
  • どんな仕事であってもプロ意識を見出せれば、それは面白い仕事になるのに、そこまでやらずに文句を言って、漠然とした夢を語っている人が多い。

というようなことを語っていた。


最近読んだ本の中で、小池龍之介さんの『偽善入門』という本の中にも、同じようなことが書かれていたので、シンクロしているなぁ、と思いつつテレビを見ていた。

「自分の個性を活かせる仕事で自己実現をしなければならない」というメッセージに煽られ、強迫的に「自分らしい仕事」を探し続ける姿勢は、「自分はかけがえのない存在だ」と安心したいからこそのものでしょう。

しかしながら「自分らしさ」に執着するあまり、目の前の仕事が手につかず、「転職したいなあ」などと考えようものなら、余計に不安になりますから、皮肉なことです。

 今の世の中では、特別でもなんでもないような砂粒のような私達一人ひとりが、その真実をごまかそうと躍起になって、さまざまなオプションを探し求め、買いあさっております。

「彼は自分だけを愛してくれているの」という特別感。

「僕がどんなにひどいことをしても、彼女は僕を愛してくれているんだよ」という特別感。

こういった特別感が得られない人達は、仕事で大成功を収めることによって、かけがえのない自分の実感を得ようとするかもしれません。しかし、それもたいていは失敗に終わります。

他に特別感を錯覚されてくれるツールは、ほとんど見つからないはずです。残りのツールはおそらく怪しげな宗教に走って、「君はありのままの君で、かけがえのない素晴らしい存在なんだよ」などという甘い言葉をかけてもらい、徐々に洗脳されていく道を歩むことくらいでしょう。

~『偽善入門』より引用

ふかわりょうさんが、マツコさん達に、「夢を叶えるには仕事でもなくて良いですよね?」と尋ねたら、マツコさんは「仕事じゃなくちゃ私はダメだわー」と言っていた。

そしてふかわさんが「やりたいことを仕事にする、ということでなくても良いですよね?」と発した質問に対しての答えは、胸がすくものだった。

やりたいことを仕事にするって、バカなことを女性誌は書くけれど、あれが一番クソなのよ。

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