グレン・グルードを聴きながら

テレビとネットから情報を遮断するという実験を始めて早10日以上の時間が過ぎた。

テレビやネットに費やしていた時間を遮断したことに比例するかのごとく、日を追うごとに自分自身の心は平安に満たされているような、そんな穏やかな日々を送っている。

そんな中、最近お気に入りなのはグレン・グルードを聴きつつ読書するという時間。

グレン・グルードのピアノの音はまるで禅寺の庭を眺めているかの如く、何も無い静寂という透明な空間の中に、生きていることの躍動感のような色とりどりのものが降り注がれるような気がして、聴いているだけで生きているということの素晴らしさを実感することが出来る。

そんなグレン・グルードの音楽に触れるきっかけとなったのが、先日行った本屋さんの店頭で目に留まった『残酷すぎる成功法則』という本だった。

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タイトルの下品さに(←失礼、)正直購入を躊躇してしまったのだけれども、話題の本だということでなんとなく購入してしまった本だった。けれども、そのタイトルとは裏腹にそれぞれ個人の成功(=幸せ)について真剣に考えることが出来る良書だった。

そして、この本の中で「普通の暮らしができない天才ピアニスト」として紹介されていたのが、グレン・グルードだった。

私のクラッシックの知識と言うものは、はっきり言って浅はかなので(笑)この本を読んで初めてグレン・グルードという人の存在を知った。しかしながら、この人物は二十世紀を代表する偉大な音楽家であり、グラミー賞を四度受賞し、アルバムを何百万枚も売り上げたアーティストだという。

そしてその天才と呼ばれる人物は、かなり変わった人だったということで。

天才ピアニストのグレン・グルードは重度の心気症(病気や細菌に脅える神経症の一種)だった。

いつも手袋をはめていて(何枚も重ねていることも珍しくなかった)、カバンいっぱいに薬を詰めて持ち歩いていた。人前で演奏するのも、移動してホテルに泊まらなければならないコンサートツアーも大嫌い。たいだい三割の公演を取り止めにし、ときには、せっかく日程を組みなおした公演を再度キャンセルしたりする。「コンサートには行かない。自分のでさえときどき行かないんだ」とは本人のジョーク。

~中略~

演奏家の卵からアドバイスを求められると、彼はこう言った。

「演奏以外のすべてを諦めることだ」

順調にキャリアを築いていたグルードだが、突然聴衆の前から姿を消す。「人生の後半は自分のために生きたい」と、三十二歳でコンサート活動の中止を宣言したのだ。生涯に行ったコンサートは全部合わせても300回足らずで、おおかたの演奏家なら三年ほどでこなせる回数にすぎない。

その後も彼は狂ったようにピアノに打ち込んだが、聴衆の前では二度と演奏しなかった。仕事は彼が望む世界を保てるスタジオ録音だけに限られた。だがなぜか、公演活動からの引退により、音楽界でのグルードの影響力は衰えるどころか逆に強まった。伝記を書いたバッザーナによれば、彼は「劇的な形で姿を消すことによって存在感を維持」し続けた。そして1982年に亡くなるまで仕事を続け、その翌年、グラミー殿堂賞を受賞した。

~『残酷すぎる成功法則』より引用

けれどもグレン・グルード自身はその自身の行動が奇癖と呼ばれていることに対して

D・B あなたは、自身の椅子を持ってどこにでもいらっしゃるし、夏でも手袋をはめたり、スノー・ブーツをはいたり、外套を着たりしていらっしゃるという話だ。そういう事実を知ると、人びとがあなたの奇癖と呼んでいるものをちょっと話題にせざるをえませんね。あれは気どりなんですか、それとも、何か重要な意味がこめられているんですか?

G・G 最初に申しあげるけど、そういったことは皆、ジャーナリズムではおそろしく誇張されているんです。たとえば、私は、雪が降ってもいないのに、けっしてスノー・ブーツなどははいたりしませんよ。

私に関して、音楽とは何も関係のないようなことについてまで、何だかんだと言われることが時にある。でも、たいていの場合は、むしろ、私がピアノをひくという事実と直接関係があることが話題になっているようですね。

たしかに私は、ほとんどいつでも手袋をはめています、時には重ねてはめていることさえある。でも私は、手で喰っているんですからね、手を大切にするのは当り前だと思いますよ。それにまた、あの椅子は私にとって絶対に欠くべからざるものなんです。もう六年もあれを使っていて、まったくがたがたになってるけど、他の椅子に代えはしないでしょうね。あの椅子みたいに完璧な輪郭を持ったものには一度だって見つけたことがないんですから。おそかれ早かれ他の椅子にしなけりゃならないでしょうけれど、それまでにはきっと隠退出来るだろうと期待していますよ。

こういったことはみな、私のピアノのひき方と関係している。たとえ或る人たちにとってこのひき方が奇妙に思われるとしても、私にはなぜそれが気取りになるのかわかりません。絶対にそんな問題じゃないんです。もっとはるかに重要なことですよ。

~『ぼくはエクセントリックじゃない―グレン・グールド対話集』より引用

こういう人が居たということを知ることが出来たというのも、何かのご縁だと思うし、実際にその天才と呼ばれる人の音楽に触れることが出来たということはとても素晴らしいものだった。

世の中にはまだまだ私の知らない物事というのものが多く存在する。

そして、その知らないことは、私が今世生きている間に全部知るということは出来ないのだろうけれども、だからこそ、これからは価値のあるものだけに目を向けて行こうと思えた。

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そうそう、『残酷すぎる成功法則』に書かれていたんだけれども、この本の監訳者である橘玲さんの解説には

こうした検証作業はたとえば、「強く願えば夢はかなう」かどうかを調べたニューヨーク大学心理学教授ガブリエル・エッティンゲンの実験によく現れている。それによるとヒトの脳はフィクションと現実を見分けることが不得意で、夢の現実を強く願うと、脳はすでに望みのものを手に入れたと勘違いして、努力するかわりにリラックスしてしまう。

ダイエット後のほっそりした姿を思い描いた女性は、ネガティブなイメージを浮かべた女性に比べて体重の減りが10キロ(!)も少なかった。成績でAをもらうことをイメージしている学生は、勉強時間が減って成績が落ちた。

自己啓発本の定番であるポジティブシンキングは、まさに「間違った木に向かって吠えている」のだ。

~『残酷すぎる成功法則』より引用

と書かれていた。

まぁこれも信じるか信じないかはあなた次第ってことなんだろうけれども、やっぱりスピ関係の人を多く目にして来た身から言えば、真実なんだろうと思えてしまったりしたのでした。

残酷すぎる成功法則

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